大判例

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東京地方裁判所 昭和27年(行モ)7号 決定

行政処分の執行停止は、行政事件訴訟特例法第十条第二項にあるとおり、「処分の執行に因り生ずべき償うことのできない損害を避けるため緊急の必要がある」場合に限つて、許されるのである。言いかえると、執行停止をすることによつて、処分の執行に因つて生ずべき償うことのできない損害を避けることができる場合に限つて、行政処分の執行停止は許されるのである。

ところで行政処分の執行停止とは、行政処分がなかりしと同じ状態をつくり出すことである。それ以上に行政庁に処分を命ずる等ある積極的な状態をつくり出すことは、もはや行政処分の執行停止ではない。このことは行政事件訴訟特例法第十条を通読することによつて理解することができるのである。

さて、本件はソ連行き旅券発給拒否処分の執行停止をしたところで、外務大臣に旅券の発給を命ずることにはならないし、況んや旅券なしでソ連へ行けるという状態につくり出すことにもならない。旅券発給拒否という処分がなかりしと同じ状態があらわれるにすぎないのである。これでは、ソ連行き旅券の発給拒否という処分に因り生ずべき償うことのできない損害を避けるために何の役にも立たない、といわなければならない。

本件申立は失当としてこれを却下すべきである。

申立人等はあるいはいうであろう。これはソ連行き旅券の発給拒否処分が不当であるに拘らず、申立人等は結局ソ連へ行けないことになる、と。それは行政事件特例法第十条が適当であるかどうかの問題であり、本件の本案訴訟の出し方及びその時期が適当であつたか否かの問題である。

また、次のようにいう者もあろう。とにかく拒否処分の効力を停止しておけば、外務大臣も思い返して、旅券を発給するようになるかも知れない、拒否処分をこのままにおくことは、その場合の妨げになる、と。しかし、本件の旅券発給拒否処分は、それ自体何らのき束力をもつものでないから、外務大臣がのちになつてさきの拒否処分の不当なことを覚つたならば、改めて申請を許す処分をするにつき、何らの妨げあるをみないのである。

よつて主文のとおり判決する。

(裁判官 新村義広 入山実 石沢健)

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